イボタ蝋

桐たんすの引き出しをスムースにするための立役者

桐たんすと言えば、引き出しをスッと入れたら違う引き出しがスッと出てくる。

それは高い気密性のなせる技なのですが、それを補助的に助けるのがこの「イボタ蝋」!

引き出しの出し入れは摩擦がおこるので、この「イボタ蝋」を塗ることにより摩擦を軽減させ、すべりを良くすることによりスムースに出し入れ出来るのです。

さて、この「イボタ蝋」ですが、知る人ぞ知る最高級の蝋なんです。

「そんなの知らない」って人も大勢いるかと思いますので、イボタ蝋について解説したいと思います。

イボタ蝋って?

なんだかヘンテコな名前ですが、ちゃんと由来があるんです。

イボタの木に寄生する虫「イボタカイガラ虫」の分泌物を集めて作った蝋なのです。

私もその事実を知った時は「なんか気持ち悪い」なんて思ったりしました。

ですがこの「イボタ蝋」って数ある蝋の種類の中では、ちょっとお高いです。さすが高級と言われることだけはあります。

どんな効果がある?

  • 艶だし
  • 表面保護
  • 滑り剤として
 など

使用用途は?

  • 白木で出来た桐製品などの艶出しと表面保護に
  • 桐たんすの引き出しを滑りをよくするために
  • ロウソクの原料に
  • 刀剣の研磨剤として
  • 障子や建具の敷居のすべりを良くするために

代表的な用途を書き出してみました。探せばまだまだあるはずです!

私の使用例

蝋塗り

桐たんすの修理屋さんである私は、引き出しの出し入れする際に摩擦が生じる所すべてに、「イボタ蝋」を塗っています。

最初は木目に逆らうように(写真の引き出しは縦に木目があるので蝋を横に塗ります)、その後木目に沿うように蝋を塗ります。なぜそのようにするのかと言うと木目に逆らうと木目が蝋に引っかかり蝋が良く乗るからです。

桐たんすに色付けをした後も蝋で仕上げるのですが、その蝋は「イボタ蝋」を使用しません。

桐たんすの色付け後の仕上げ蝋は「カルバナ蝋」を使用します。

「カルバナロウで仕上げ」については近い内に記事で紹介したいと思います。

まとめると

家具や建具、木工作品など完成してお客様の手に渡れば、見た目のデザイン・使い勝手がすべてで、表面の仕上げに何を使っているのかまで気にするお客様はほとんどいません。

もちろんそれでいいと思います、私自信なにかを購入する場合、どんなすごいテクニックを使っているか、どんな良い塗料を使っているのかなんて、少し乱暴ですがどうでも良いです。

なぜかと言うと、その物を見て「気に入るか」「気に入らないか」なのですから、気にいると言うことは私から見て「すごい」とか「綺麗」とか思って気にいる訳ですよね。

逆にどんなに良い物を使っていても「気に入らない」って思うってことは「あまり綺麗じゃないし私的に使い勝手が悪そう」とか思って気に入らない訳ですよね。

なのであまり気づかれないのですが、なくてはならない物がこの「イボタ蝋」なのです!

そう言った意味では「縁の下の力持ち」的な存在なのかもしれません。

 

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