お預かり時の写真
中段だけ「トノコ仕上げ」となりますので、上写真の赤丸の部分の金具が出っ張っていますが、引っ込めるようにいたします。
この金具は、引っ張りだして手で持つことも出来ますが、本来は、引っ張りだした中に棒状の棹を通して、箪笥をすぐに持ち出せるようになっています。
なので、この金具を「棒通し」なんて言ったりします。
その名残りで箪笥のことは1本2本ではなく、一棹、二棹と言ったりします。
天井とフラットにしても、引っ張り出すことは出来ます。
修理風景
金具外し
金具が外し終わりました。
箪笥の洗い
箪笥を洗った後、よく乾かします。
大体半日ぐらいで乾くのですが、板が組んであるような箇所が乾いていないこともあるので、良く乾かしてから修理します。
修理風景
背板が緩んでいたので、一度取り外してから糊を入れ木釘で止めます。
背板を取りはずすと中の修理がやりやすくなります。
糊が切れて木釘だけでもっているような状態です。
隙間に糊を入れ、木釘で打ち直します。
箪笥の真ん中あたりが外に膨らんでいたので、棚板の隙間に糊を入れハタガネで圧着させながら木釘で止めます。
引き出しの底板なども隙間があいて緩んでいる所に糊を入れ木釘で止めます。
箪笥の横板が虫に食われてグズグズでしたので、取り替えます。
取り替えることで見栄えもよくなりますが、強度も出ます。
虫くいで中までグズグズですと、ボンドは効かなくなるし、木釘、クギですら効かなくなるので、とても弱くなります。
金具について
丁番を新品に取り替えて、扉中央の金具はそのまま。
上写真のような感じになります。
丁番には上写真のような飾りの金具がつきます。
上写真のようになります。
上写真の赤矢印の金具は、ご相談の上付けないこととなりました。
この金具は箪笥が重なる時に連結するための金具なので、一段で使用するのであればないほうがスッキリすると思います。
付けるとしたら、掘り込みを入れて金具が床に付かないようにするのですが、何かの拍子に金具が曲がったりすると床を傷つける可能性があります。
なので、箪笥が床に接地する面には金具はつけない方が無難な気がします。
デザイン上どうしても付けたい場合などの時はもちろんお付けします。
今回は取り付けなしに致します。
浮造り(うづくり)
浮造りとは、刈萱(かるかや)の草の根を水につけ干したものを束にした上写真のような棒状の道具です。
木目に反って、行ったり来たりゴシゴシこすると固い部分は残り柔らかい部分は削れるので木目を一層際立たせることができます。
砥の粉(とのこ)塗り
トノコ仕上げに使う砥の粉はこのようなものになります。
この砥の粉を水で溶いたものを塗っていきます。
この工程を目止め処置とか言ったり、捨て塗りとか言ったりします。
細かい木の導管に砥の粉を入れることで、二度塗り目の乗りが良くなります。
また、色に深みが出ます。
仕上げには、矢車(ヤシャ)の実から煮出した液と、先ほどの砥の粉を調合したものを使用します。
ヤシャには木目を出す効果があります。
蝋(ろう)塗り
砥の粉塗りが終わりましたので、表面に手垢止めと艶出しのための蝋を塗っていきます。
表面に艶が出たのがわかると思います。
防水効果も少しはありますが、基本的には水は厳禁です。
夏の暑い時などは、手汗でも染みになることがあります。
金具
扉の取っ手の金具に房(ふさ)が付いていましたが、もともと一つないのと現在のものがくたびれていたので、新しいものをお付けします。
横金具なんですが、もともとが中段のため金具が連結用の金具になっていて、ツメを中に入れてしまうと引っ張り出せなくなってしまうので、工房にあった似た金具をお付けします。
上写真のように真ん中が爪で引っ張り出せるように金具がくり抜いてあります。
一段だけの使用ですので、横金具は飾りみたいなものですが、爪が引っ張り出せると爪を持って箪笥の移動が出来ますので、こちらの金具をお付けします。
上写真のように引っ張り出せます。
桐箪笥トノコ仕上げ再生
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