その2
引出しの仕込み・削り

埋木を引出しの隙間分より少し多め下に出したので、このままだと引出しが入りませんので鉋で削って調整する仕込みをおこないます。

引出しの仕込みは髪の毛1本単位で削って調整していきます。

箪笥本体の枠の部分を削っていくのですが、箪笥のように箱状に組まれて出来上がっているものに鉋をかけるときは特に注意が必要です。
真っすぐに鉋を引くと木目の向きが変わる所で欠けてしまう可能性があるんです。
刃が切れる状態でも角がポロっと欠けてしまうことがあるんですね。

なので、そのリスクを回避するために木目の向きが変わるところで鉋を回すように引きます。
そうすることで木目に沿って鉋をかけてるのと同じことになりますので欠けることがありません。

箪笥の枠は脆いので、少しずつ少しずつ削っていきます。

箪笥本体に鉋をかけていきます。
古い桐箪笥なので、多少の反りや曲がりなどがあるので、ある程度たいらにしていきます。
一番低い所に合わせて削ってしまいますと箪笥が薄くなってしまいますので、鉋で簡単に削れる部分を削りながら平面をある程度だします。
削った部分が元の木肌が出てきているのがわかると思います。

大体粗削りが終わりました。

良く切れる鉋で薄く薄く削って仕上げていきます。

箪笥の削りが完了しました。

工房到着時と比べて見るとどれだけ綺麗になったか良くわかります。

引違い戸の中も綺麗に致しました。

扉の丁番金具は新しいものを使用するので、このままだと丁番だけ浮いてしまいますので、艶消しの黒で塗装します。
表面をペーパーで荒すことを「目荒らし」とか「足付け」とか言ったりします。
なぜそうするのか?と言いますとツルツルの上には塗装は付きずらく剝がれやすい。
そのため表面をあえて荒らします。

金具を艶消しで塗装したのですが、古い金具と統一感が出るように、あえて薄拭きにしてあります。

テカテカした部分がなくなり、いい感じの艶消しになりました。

良い感じになったと思います。
目止め塗り

一度目の塗りは目止め(めどめ)のために塗ります。
木の導管を埋める目的の塗りになります。
「下塗り」とか「捨て塗り」とか言ったりもします。
木の細かい繊維(導管)に砥の粉が入ることで二度目の塗りの乗りが良くなります。

一度目の塗りは木目を出すことが目的ではないので、木目もなくノッペリとした感じになります。
浮造り

一度目の下塗りが終わったので、二度目の砥の粉を塗る前に「浮造り」と呼ばれるもので木目を際立たせていきます。
この浮造り棒は「カルカヤ(刈萱)」の根を束ねて作られます。
カルカヤは日本の野草(イネ科)で、根がとても強くてしなやかです。
この特徴が浮造りにちょうど良いです。
例えば金属のブラシなどでは、桐は柔らかいので木の繊維を壊してしまいます。
この浮造り棒も硬め・柔らかめなどがあり、職人の好みで使い分けたりしています。

浮造りをすると、塗った砥の粉が剥がれていくのですが、それで問題ありません。
木の繊維(導管)に入った砥の粉は残ります。

浮造りをかけた部分の木目が際立っているのがわかります。
木は夏は早く成長して、冬は成長が遅くなります。
一般的に木材の木目として認識している部分が冬目です。
それ以外が夏目です。
夏目(なつめ)
春〜夏にかけて成長した部分。
特徴
-
色:薄い
-
材質:柔らかい
-
細胞:大きくて粗い
-
削れやすい
浮造りで 先に削れる部分。
冬目(ふゆめ)
夏の終わり〜秋に成長した部分。
特徴
-
色:濃い
-
材質:硬い
-
細胞:小さく密
-
削れにくい
冬に備えて成長がゆっくりになり、
詰まった硬い組織になります。
浮造りすると 残って木目として浮き出る部分。

砥の粉を塗る部分すべてに浮造りをかけていきます。
仕上げ塗り

仕上げ塗りをする前に、箪笥を温めます。

ストーブで部屋の温度を上げ箪笥を温めます。
木の中の余分な水分が抜け、表面が乾いた状態になる
そうすると砥の粉が均一に乗りやすくなります。
それ以外にも、温めることで砥の粉の吸い込みが良くなります。
これは温めることで桐の表面が開いて砥の粉が木の中に噛みやすいと考えられます。
結果として砥の粉の乗りが安定して、砥の粉が剥がれにくくなると私は考えています。

砥の粉塗りは時間との勝負。
いい色を出すために箪笥を温めているってのもあるのですが、乾き出す前に塗り切らないとなりません。
伝統的な桐箪笥の砥の粉仕上げは水で染みになります。
乾き始めてしまった所に液体の砥の粉を置くと、それも水分なので染みになってしまうからです。
考えたり迷ったりしている暇はないので、刷毛を置いたら一気に塗ります。
刷毛さばきも大事で、刷毛がうまく扱えないと素早く塗ることが出来ないんですね。

砥の粉の仕上げ塗りが終わりました。

綺麗に木目が出たと思います。
蝋引き

砥の粉を塗った部分にカルナバ蝋と言うロウを塗っていきます。
カルナバ蝋(カルナバろう)は、南米ブラジルに生えているヤシの木で、カルナバヤシの葉から採れる天然の植物ワックスです。
「ワックスの王様」なんて言われていたりします。
カルナバ蝋を塗ると
-
表面に薄い蝋の膜ができる
-
汚れが付きにくくなる
-
乾いた艶が出る
桐箪笥の場合は保護と艶出しの役割ですね。
桐箪笥は
-
塗膜を作らない仕上げ(砥の粉・浮造り)
-
木が呼吸する
家具なので
薄くて硬い天然ワックス
のカルナバ蝋がちょうどいいわけです。

表面に光沢が出たのがわかると思います。

砥の粉を塗った部分すべてにカルナバ蝋を塗っていきます。
金具の取り付け

写真は箪笥の横金具で「棒通し金具」とか言ったりしてます。

ダボの役割をする打ち込みピンを玄翁で叩いて取り付けます。

棒通し金具の役割は、「箪笥を上下連結させる」、「位置決め」、「固定」などがあります。

この金具の中には爪と呼ばれる金具が入っていて写真のように引っ張り出すことができます。

江戸時代~昭和初期は桐箪笥の中に貴重品を入れることが多かったので、火事などの場合棒を通して肩に担いで迅速に持ち出せるようにしていたそうです。

なので昔は「竿通し」とも呼ばれていたみたいです。
桐箪笥の数の単位は「一棹(ひとさお)、二棹(ふたさお)」と呼ぶのは、棒通しに棹をさしたことから来ているらしいです。
桐は木材の中でも軽量なので、中がからならびっくりするぐらい軽いので、棒を通して二人で持ち運ぶのは容易に出来ます。

外した金具をそれぞれ元の場所に取り付けていきます。

扉の金具も取り付けていきます。

元々の金具は赤丸の部分が固くなってしまっていて扉の開閉がうまく出来ませんでしたので、新しいものに交換致しました。

新しい物に変えたので、扉の開閉がスムースになりました。
半棚にオイル

上段の引違い戸の中の半棚の正面には見栄えの良い木材が使用されていましたので、オイルを塗布して発色を良くします。

着色しているわけではなく、透明なオイルを塗布しています。
色が濃くなった部分がオイルを塗布した箇所です。

半棚正面の硬い木材(広葉樹)の発色が良くなりました。
前回までの作業→ 古い桐箪笥を砥の粉仕上げで未来へ繋ぐ その1
続きを見る→ 古い桐箪笥を砥の粉仕上げで未来へ繋ぐ その3
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