「家に古い桐箪笥があるけどどこに頼もうかな?」と思いながらネットで検索されて業者を見つけていくわけですが、「業者によって修理代金に違いがあるけど何が違うのかな?」って感じられるのではないかと思います。
「なるべく安く修理したい!」と言う人もいれば「多少高くてもしっかり直して欲しい!」と言う人もいます。
私自身が桐たんす職人なので、職人目線で述べたいと思います。
桐箪笥の修理とは
桐箪笥は言わずと知れた嫁入り道具の一つで昔は当たり前のように娘が嫁に行く時は桐たんすを持たせるといった風習があったのですね。
なので、お婆様やお母様の桐箪笥が家のどこかにある家庭も多いのです。
処分してしまう人もいますが、「引っ越しや家の建て替えの時にせっかくだから直して使いたい」と言う人も多いです。
もちろん今でも新品の桐箪笥も販売されていますが、昔の桐箪笥と比べるとデザインが多少変わってきていると思います。
新品の桐箪笥は非常に良いですが高額なので中々手が出しづらいのも事実、私の所で修理したいと思われる人は金額よりも代々受け継がれている自分の家の桐箪笥を直したいと言った人が多いです。そういった人は新品ではダメなんです。
修理って主に何をするの?を見ていきましょう。
修理内容とは
- 引き取った金具を外す
- 箪笥を洗いよく乾かす
- ガタのある所を圧着する
- 箪笥本体や引き出しの削っても取れそうもない傷や欠けを修理する
- 箪笥本体の棚板の曲がりなどを矯正したり補修する
- 引き出しの隙間がなくなるように木を足す
- その他、依頼内容に沿って修理したり製作する
- 引き出しの仕込みをする
- 埋木した凸凹を鉋で削りながら全体の鉋掛け
- 色つけをする前の下準備で木目を際立たせる「浮造り」と言う加工を施す
- トノコなどの色をつける
- 「カルナバ蝋」で色付けした所に塗り光沢を出す
- 元の金具か新品の金具を取り付ける(この時に扉も取り付ける)
- 引き出しやお盆の出し入れなどをスムーズにするため「イボタ蝋」を引き出しと本体が接する場所に塗る
- 最後に箪笥全体をチェックしておかしな箇所はないかチェックする
桐箪笥の修理はおおまかに見てもこれだけの工程があります。
これを見れば一人の職人さんでは3日や4日で終わらないのはわかると思います。
出来上がったものだけを見るとそれほど時間がかかったように見えないのが不思議なものですが、大変手間のかかる作業なのです。
桐たんすのリメイクの依頼も多い
前からリメイクのご依頼もありましたが、最近特に多い気がします。
「リメイクって何?」って人もいるかと思いますのでご説明します。
簡単に言うと桐箪笥を別の形に変えるってことです。
ご依頼は多種多様ですが、「3段の桐箪笥をすべて横並びに使いたい」とか「一番上の段をテレビボードにして欲しい」とか「通常の仕上げではなくオイル仕上げをして欲しい」など。
ある程度、元の形から連想できて改造可能な範囲であれば基本どんなものでもリメイクできます。
特に地震などが最近多いので、「横並びで使いたい」といったご依頼が多いのかもしれません。
見積と料金について
私の所を含め他の業者さんも見積もりは原則無料が多いと思います。
遠方の方の場合は有料になります。
どうしても修理を仕事にしているので、実際に見ないと料金の判断がしにくいといった職業です。
最近はインターネットの環境が整っているので、写真とサイズを送ってもらえば大体の金額はわかります。
私の所ではお見積りに伺える場所であれば実際に行き見積もりをしますが、ご依頼が多数溜まってしまっている時や遠方の方や、修理代金が10万円以下になってしまう場合は提携している配送業者に依頼して引き取りや納品をしています。
下記リンクで桐たんすの修理ページ
業者や職人によって修理代金の違いについて
「桐箪笥の修理代金っていくらくらいが妥当なの?」って思う人もいるかと思います。
大体の相場がわからないと「ぼったくられてしまうのでは?」と心配になってしまいますよね。
ですが、作った物に値段をつけているわけではないので、料金形態がハッキリさせにくいのも事実です。
同じ桐箪笥の修理でも、その状態はまちまちで、中には通常の2倍近くの手間がかかってしまう箪笥もあるわけですから一律で同じには出来ないのです。
それでも経験からすると10万円~30万円ぐらいには収まるかと思います。
ちょっと幅がありますが、箪笥の状態や場合により引き出しを製作したり良い金具をつけたりする場合を考えるとこのぐらいの幅になってしまいます。
職人さんの仕事の速さも関係してきます。
同じ仕事でも、ある職人さんは1日で終えることが出来、ある職人さんは3日かかってしまうのなら、1日で終えることができる職人さんの方が安くできるわけです。
なら仕事の早い職人さんに依頼すれば安くできる!ってなるわけですが、一概にそうとも言えません。
仕事が速くてうまいのなら、それがベストですが、ただ手を抜いているだけの可能性もあります。
安さだけで選ぶと後悔することも
仕事が速くてうまくて安いなら、ご依頼者様には一番やさしい業者となります。
しかし、そんな仕事の仕方をしていたらいつか体を壊します。
そもそも、スピード重視の仕事は私はいい仕事は出来ないと思っています。
もちろんただ仕事が遅いのは論外で、段取りよく仕事をするのが前提です。
修理代が安いこと自体は悪いことではありませんが、安くやってもらったからある程度はしょうがないと割り切ならいといけない場合も出てくるかもしれません。
なるべく安くして欲しい場合、最初の打ち合わせでしっかりと相談するのが良いと思います。
お互いが納得できて初めて仕事に移れます。
例えば、桐箪笥の修理に20万円かかるとしても、大体三分の一は材料代に消え、残りが手間代といったところでしょうか、その手間を修理で10日かかったとして日割りにすると大体の料金がわかると思います。
最後に
修理代金は業者によって値段がまちまちです。
色々な業者様がいらっしゃいますが通常の大きさの箪笥で18万円ぐらいが平均かと思います。
箪笥の大きさや作業内容によって金額が前後します。
桐たんす職人の高齢化により修理できる人もひと昔に比べると段々と少なくなっているように思います。
皆様の思い出のつまった桐箪笥を綺麗に直したいに応えられれば幸いです。
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